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月曜メール

YPP月曜メール  私の思うことVol.577 【発する言葉を吟味する体験】

やや雲がかかった涼しい朝を迎えている関東です。
みなさまの上空はいかがでしょうか。


私事ですが、
早いものでYPPを始めた時には1歳だった息子が
大学受験の年齢となりました。


そんな息子が先週の23日(祝日)に急に
「今日中に大学受験の費用を振り込まないといけない」と言い出し
一家で慌てました。


祝日には金融機関がやっていないということを
我が子が知らなかったことを初めて知りました(笑)。


そんな時
第一声として思い浮かぶのは
「なんでもっと早く言わなかったの?!」という言葉です。


が、グッとそれを飲み込みました。
今更言っても意味のない筆頭のセリフです(笑)。


そんなエピソードと共に、今朝紹介したいのは
河合隼雄先生のご著書からの言葉です。


日本におけるユング派心理学の第一人者である河合隼雄先生が
『こころの処方箋』(新潮文庫)の中で
こんなことを書いておられます。


【100%正しい忠告はまず役に立たない】



少し引用させていただきます。


ーーーーーーーーーーーー
ともかく正しいこと、しかも、100%正しいことを言うのが好きな人がいる。
非行少年に向かって、「非行をやめなさい」とか、
「シンナーを吸ってはいけません」とか、忠告する。
・・・(中略)・・・
もちろん、正しいことを言ってはいけないなどということはない。
しかし、それはまず役に立たないことくらいは知っておくべきである。
たとえば、野球のコーチが打席にはいる選手に
「ヒットを打て」と言えば、これは100%正しいことだが、
まず役に立つ忠告ではない。
ところが、そのコーチが相手の投手は勝負球にカーブを投げてくるぞ、と言ったとき、
それは役に立つだろうが、100%正しいかどうかはわからない。
敵は裏をかいてくることだってありうる。
あれもある、これもある、と考えていては、コーチは何も言えなくなる。
そのなかで、敢て何かを言うとき、
彼は「その時その場の真実」に賭けることになる。
それが当たれば素晴らしい。
もっとも、はずれたときは、彼は責任を取らねばならない。
ーーーーーーーーーーーーー


そして河合隼雄先生は、
『このあたりに忠告することの難しさ、面白さがある』と仰っています。


もう少し引用を続けます。



ーーーーーーーーーーーーー
(その忠告は)
ひょっとすると失敗するかも知れぬ。
しかし、この際はこれだという決意をもってするから、
忠告も生きてくる。
己を賭けることもなく、責任を取る気もなく、
100%正しいことを言うだけで、人の役に立とうとするのは虫がよすぎる。
そんな忠告によって人間が良くなるのだったら、
その100%正しい忠告を、まず自分自身に適用しているとよい。
「もっと働きなさい」とか、「酒をやめよう」などと自分に言ってみても、
それほど効果があるものではないことは、すぐわかるだろう。
ーーーーーーーーーーーーー


「覚悟」とは程遠い、日常で
自分が言いたいから言う、ということで発する言葉と
相手にとって有益かどうかを吟味して発する言葉
果たして、どちらの割合が多いだろうと考えてみると
おそらく、、、前者の方が相当数にのぼりそうです。



特に家族に対して、子供に対して
身内になればなるほど
パッと思いついた言葉を言ってしまいがちな気がします。



おそらく「忠告」したくなるシーンというのは
相手より自分に経験値があると思われる場面なので、
年齢や経験を重ねるほど、そういう場面に遭遇しやすくなるでしょう。



役に立たない「100%正しいこと」ではなく
良かれと思いながら試行錯誤して、伝える中身を吟味して発すること。


丁寧に生きるというのは
憧れる一方で
日常的にはなかなか骨が折れて奥が深い、滋味深いもののように感じます。



そして、すべては試行錯誤
正解が一つではない世界とはいえ、
少なくとも「相手のために」が本当であるときは
そう悪い結果にならない気がします。


とはいえ、従来の習慣でつい発してしまう言葉は多々あります。
せめて、
発した後に「あ、これは意味のなかった忠告だ(苦笑)」と気づける程度に
成長できたらいいなと思います。



今週も学びと実践のチャンスに恵まれています。
笑顔溢れる一週間になりますよう。


YPP
五味渕紀子

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